口腔筋機能療法
このような方におすすめ
お子様の場合
近年、インスタント食品や加工食品など、やわらかくて食べやすい食品の普及に伴い、食べ物を噛まずにすぐに飲み込んでしまう方が増えています。
昭和初期に比べると、食事にかける時間が約半分になったというデータもあります。つまり食事の際に「噛む」回数が約半分に減っているのです。
特にお子様の場合、幼少期から「噛む」「ちぎる」という訓練をせずに育つと、顎が十分に発達せず、上の歯と下の歯が正常にかみ合わない状態(不正咬合)になり、お口周りの筋肉の未発達により口呼吸になってしまう傾向が強く、歯並びだけでなく全身の健康にも影響を及ぼす危険性があります。
お口周りの筋肉を鍛えて、本来の正常な機能を取り戻すことにより、バランスの取れた綺麗な歯並びになったり、喘息が治ったりすることもあります。お口周りの筋肉の発達がいかに大切なことかがお分かりいただけると思います。
当院では、不正咬合で来院されたお子様のほとんどが、矯正治療だけでなく、このトレーニングも同時に受けています。
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- 歯並びが悪いお子様
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- テレビを見たり、本を読んだりしているとき、ポカンと口が開いているお子様
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- ラーメン、うどん、そばなどの麺類をすすることができないお子様
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- 食べ物を丸ごとかじったり、食いちぎることができないお子様
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- 歯科検診にて歯並びや噛み合わせを指摘されたお子様
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- 風船を膨らませることができないお子様
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- 滑舌が悪いお子様
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- 舌が上あごに届かないお子様
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- 唇を閉じずに食べる、くちゃくちゃと咀嚼音を立てて食べるお子様
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- ものを飲み込む際に舌の先が前歯の裏側に当たって、押しつけるようにして飲み込むお子様
成人の方の場合
年齢とともに気になってくる、頬や口元などお顔のたるみ。これらの最大の原因は、表情を作るお顔の筋肉が弱くなることだと考えられています。
舌や唇、頬や顎の筋肉を毎日の生活でしっかり使わないと、お口周りの筋肉が衰えてしまい、リフトアップができなくなり、結果的にたるみが生じます。
食事の際によく噛んで食べることはもちろん必要ですが、それ以外にも筋肉を鍛えることで、より高いアンチエイジング効果が期待できるのです。
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- 頬のたるみやほうれい線が気になる方
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- お口元が老けたような気がする方
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- 顔が左右不均一で、歪んでいる方
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- 活舌が悪い(舌の位置が下の前歯の後ろにあり、発音がきちんとできていない)方
高齢の方の場合
高齢になると、食べ物や飲み物を飲み込む行為である「嚥下」に必要な筋肉が衰えてしまい、機能が低下するため、食べ物や飲み物を飲み込めなかったり、むせたり食べ物をこぼしてしまいがちになります。
嚥下機能が正常な状態では、食べ物や飲み物を飲み込むと空気の通り道である気管の入り口が閉じますが、高齢になり嚥下機能が衰えてしまうと、この機能が損なわれます。
唾液や飲食物が気管に間違って侵入した場合、通常はむせたり咳き込んだりして、唾液や飲食物を追い出そうと気道防御反射が起きて、体を守ろうとします。逆に、食事のたびにむせたり咳き込んだりしてしまうのは、嚥下障害による誤嚥が起きているサインでもあるのです。
高齢になると反射神経が弱くなるため、誤嚥しても本人が気づかないことがあります。誤嚥は窒息の原因にもなりますが、唾液や飲食物に含まれる細菌が肺に侵入すると「誤嚥性肺炎」を起こしてしまいます。
誤嚥したからといって必ずしも肺炎になるわけではありませんが、高齢者は抵抗力が低下しているので、肺炎のリスクが高くなると言わざるを得ません。
肺炎は現在、日本人の死因の第4位を占めています。さらに、入院を必要とした高齢者の肺炎の種類を調べたデータによると、80歳代では約80%、90歳以上では95%以上が誤嚥性肺炎を発症していると報告されています。
つまり健康で長生きするためには、よく噛んで食べること、お口の周りの筋肉を鍛えることがとても大切なのです。
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- 食事中にむせるようになった方
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- 食べ物を飲み込みにくくなった方
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- お口から食べ物がよくこぼれるなと感じている方、歪んでいる方
トレーニングの流れ
トレーニングは基本的に自宅で行っていただきます。まだ小さいお子さんやご高齢の方は、ご家族の協力が必ず必要となってきます。
トレーニングは継続することがとても大切なので、時間を決めて一緒にトレーニングをしてあげてください。
- 01
- 診断
お口の周りの筋肉の状態を検査し、どの部分の筋肉が弱っているのかなどを調べます。また虫歯の有無、歯並び、噛み合わせ、顎の状態などの口腔内検査をして、現在の状態を調べます。 写真の機械で、舌圧・口腔周囲筋を測定します。
- 02
- 歯科医院で行なう
トレーニングの練習
状態に応じて作成したトレーニングメニューを一緒にこなしながら、トレーニングの練習をしましょう。
月に1回程度歯科医院にご来院いただき、チェックとトレーニングをしましょう。1回あたりのお時間は20〜30分程度です。
- 03
- ご自宅で行なう
トレーニング
歯科医院で練習したトレーニングメニューをご自宅で実践していただきます。
小さいお子様の場合は、お母さまもご一緒にトレーニングをし、楽しみながらやりましょう。
- 04
- 改善点を確認する
歯科医院にて、トレーニングの効果や癖がどの程度改善されたかをチェックします。
改善していた場合は次のステップに進み、新しいトレーニングメニューを実践します。
- 05
- 自宅でのトレーニング
ステップ3と同じように、ご自宅で新しいトレーニングを実践していただきます。習慣や癖が改善されるまで、④と⑤を繰り返し行いましょう。
トレーニング方法(一例)
用意するもの
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- タオル
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- 手鏡(なるべく大きいほうがお口の中を確認しやすいです。)
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- 木の棒(食べ終わったアイスの棒などでもOK。)
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- ストロー(細めのものがGOOD。)
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- スプレー(普通の霧吹きでOK。
ノズルが調整可能で水の出方を直線にできるものを選んでください。)
1.スポットポジション
(舌先の正しい位置を覚えましょう)
普段の何もしていないときやリラックスしているときの、飲食物を飲み込む際の正しい舌先の位置を覚えましょう。
上の前歯の付け根から喉の奥まで舌を滑らせると、少しくぼんでいるのがわかると思います。そこが舌先の正しい位置です。このトレーニングではこの正しい位置を「スポット」と呼ぶことにします。
- ①
- スポットの位置を鏡で確認しながら、スポットに木の棒を当てます。
- ②
- 木の棒を離して、同じ場所(スポット)を舌の先で触れてみてください。このとき、舌の先は丸めずに。
以上のことを繰り返し練習して、まずは舌先の正しい位置を覚えましょう。
2. ポッピング(舌を上に持ち上げる力を強化しましょう)
- ①
- 舌全体をお口の中の上側の部分に吸着させます。このとき、舌先がスポットにつくようにします。
- ②
- 舌を完全に吸着させたら、舌を下におろして「ポン」と音を出しましょう。うまく良い音が出せるようになるまで練習をしてください。
3. バイト(噛む力を強化しましょう)
噛むときに筋肉が緊張する動きを手で確認し、覚えてください。
- ①
- 頬のエラに両手を当てて奥歯を食いしばります。このときも、舌先がスポットにつくようにします。「咬筋」のチェックです
- ②
- こめかみ部分に両手を添えて、同様に噛んでみてください。「側頭筋前腹」のチェックです。
- ③
- 耳の上部に手を当て、同様に噛んでみてください。「側頭筋後腹」のチェックです。
それぞれの場所で筋肉が緊張して硬くなっていることに気づかれたでしょうか。
特にお子様は、①の咬筋をしっかり育てることが大切です。
左右の筋肉の動きが違ったり、あまり動かない場合は、筋肉がちゃんと発達していない可能性があるので、意識して食事をし、両方の歯を均等に使い、よく噛んで食べるように気をつけましょう。
噛む回数は、食材の切り方や調理法を工夫することで増やすことも可能です。
4.スラープスワロー( 正しい飲み込み方を身につけましょう)
舌を立てて水を飲み込む練習をしましょう。
- ①
- 舌先をスポットにつけ、お口の中の上側の部分に吸い上げた状態で、正中から3番目にある上の糸切り歯の後ろあたりの歯でストローを噛んでください。
- ②
- お口の横からお口の中にスプレーで水をシュッとひと吹きし、吸って飲み込みます。このとき、奥歯はしっかり噛み合わせた状態で、唇は開いたままの状態で吸い込みます。 唇を開いた状態で食べ物や飲み物を飲み込んでください。鏡を使い、飲み込む時の舌の状態を確認しながらトレーニングを行いましょう。
5.ポスチャー
( 舌を常に上あごにつけましょう)
- ①
- 上記の「4」と同じ要領でストローを噛み、その状態で軽く唇を閉じます。
- ②
- そのままテレビを見たり、本を読んだりしながら、5分間程度リラックスします。 このトレーニングは、舌を常にお口の中の上側の部分にくっついている状態にするためのものなので、5分以上できる方は、時間を長く設定してみてください。
6.タオルの引きちぎり
タオルを口唇と舌で挟み口でくわえて、顔の筋肉だけだなく全身の力でタオルを引っ張ります。
顔の表情筋をギューッと縮めるイメージで行ってください。
→タオル引きちぎりトレーニングについて
「1」~「6」のトレーニングを2週間、毎日続けて練習してください。
上手にできるようになったら、歯科医師に確認してもらいながら、次のステージに進みましょう。
一緒にトレーニングを頑張りましょう!
いつでも、どこでも、
誰でも簡単にできる 「あいうべ体操」
あいうべ体操は、今井一彰先生(福岡のみらいクリニックの院長)が考案された体操で、口呼吸から鼻呼吸に移行するための簡単な体操です。簡単にできて効果的なことから、多くのメディアで紹介されています。
こんな方におすすめです
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- 常に口が開いている方
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- だるい、やる気が起きない、なんとなく疲れやすい方
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- いつでも、どこでも、簡単にできる健康法を知りたい方
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- 花粉症、喘息、アトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患をお持ちの方
「あいうべ体操 」のやり方
当院では、エクササイズとして「あーにーよーべー体操」にアレンジしています。
より 舌を上げやすくするトレーニングです。